劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』

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「RE:cycle of the PENGUINDRUM[前編]君の列車は生存戦略」
オフィシャルレポート

4月29日(金・祝)に公開となった劇場版「RE:cycle of the PENGUINDRUM[前編]君の列車は生存戦略」。2011年に放送されたTVシリーズ「輪るピングドラム」が、スクリーンに帰ってきます!
クラウドファンディングで支援を募っていた本作。公開に先立つ4月9日(土)川崎チネチッタで、クラウドファンディング向けの完成披露試写会と舞台挨拶が実施されました。イベントでは幾原邦彦監督が登壇。また伏せられていたゲストとして、木村 昴さん、木村良平さん、荒川美穂さん、三宅麻理恵さんが登場し、大きな盛り上がりとなったイベントの様子をお届けします。

本編終了後、しっとりとした拍手が劇場を満たす中、司会進行の池田慎一プロデューサーが登場。本作を代表する曲のひとつ「ROCK OVER JAPAN」のBGMとともに幾原監督が登場すると、さらに大きな拍手が起こった。

幾原監督は、10周年を記念したTシャツを着て、劇場版の新キャラクター「プリンチュペンギン」を手に、緊張した面持ち。本作の制作について「劇場版の制作について企画が生まれたときは、TVシリーズのフィルムをつないだイベント上映的なものになると思っていた。クラウドファンディングで予想を上回る支援をいただいたおかげで、やれることの幅がかなり広がって、『映画』にできるなと思いました」と感謝した。

舞台挨拶のステージに並ぶのは、「ペンギン1号・2号・3号」の等身大フィギュア。このフィギュア制作も、クラウドファンディングの支援によってできたことのひとつだ。加えてエスメラルダとプリンチュペンギンの制作予定も発表したところで、シークレットとされていたゲストが明かされた。高倉冠葉役の木村 昴さん、高倉晶馬役の木村良平さん、高倉陽毬役の荒川美穂さん、荻野目苹果役の三宅麻里恵さん、4人のメインキャスト集合が明かされると、会場は興奮の雰囲気に包まれた。

木村 昴さんは「進化した『ピングドラム』を、10年ぶりに皆様の元に届けることが叶いました。皆さんのお力あっての今回の映画だと思います」と興奮気味に挨拶。そんな昴さんにツッコミを入れつつ、木村良平さんも「上映後に(劇場に)入ってくるのはやっぱりドキドキします。暖かく迎え入れていただけて安心しています」と微笑む。荒川さんと三宅さんも、クラウドファンディング支援者と舞台挨拶を実施できることに向けた感謝の言葉をそれぞれ述べた。
2012年のTVシリーズから10年ぶりに起動した『ピングドラム』プロジェクト。10年ぶりに作品に「再会」した感触について聞かれた昴さんは、「まさか映画になるとは思わなかった。しかも単なる総集編ではなく、新しいシーンがいっぱいで、『待って、監督どんなことを考えていたんですか!?』と尋ねたくなる。自分は出演者でもあるけれど、作品のファンとしても、『ピングドラム』が新しく生まれ変わった、リサイクルされたと感じます」と大興奮。

アフレコについて質問されると、三宅さんは「初めて大きな役をいただいたのがこの作品。もうこれしか見えないという毎日でした。10年ぶりに苹果を演じると、当時の気持ちが自分の中に思い起こされて、中学2年生のころの日記を読んでいるような気持ちです」とコメント。荒川さんも「当時は一生懸命で、周りを見る余裕がなかったです。『こういう風にやりたいけど、うまくできなかったな』という思い出すシーンもありました」と振り返った。
良平さんは「10年前の自分の芝居にもう一回寄り添う機会はなかなかない。今回はTVシリーズの芝居を録り直したシーンもあって、当時に寄り添うつもりでやりました。新鮮だし、腕が鳴る感じがありましたね」と語る。晶馬のアフレコはすんなり進んでも、ペンギンの収録では監督のこだわりが強く、何度もNGが出たエピソードを明かした。
昴さんは「10年前、オーディションで第一声を発した際に、監督が『いやあ、君ほど下手くそな人に会ったことがないよ!』と言われたときから、私のピングドラムが始まっています」と熱弁。「10年ぶりに冠葉のセリフを言ったら、監督が『……うまいな〜、ダメだな!』と(笑)。『もっと下手にやんなきゃ! もう1回思い出して、下手な自分を』『こうですか!?』『そうそう、下手になってきた!』というアフレコでした。NGではあるんですけど、なんだか僕は褒め言葉のように感じて、非常にうれしかったです!」と予想外のエピソードを語ると、劇場は笑いに包まれた。

続いての質問は、映画のおすすめポイントについて。荒川さんはプリンチュペンギン(上坂すみれ)も加わった「ROCK OVER JAPAN」の新アレンジを挙げ、「このシーンだけでも何度も見たい」とコメント。荒川さんが兼役で参加しているトリプルHの新曲も聞いてほしいと語った。
三宅さんは「お姉ちゃん」(三宅演じる苹果の姉、桃果)の登場について感慨深い様子。「お姉ちゃん(桃果)の出演シーンが、どのカットもキレイでこだわりがある。これが桃果なんだ……と思いました。序盤のお姉ちゃんの美しさを何度も見返してほしいです」と「姉」を激しく推した。
良平さんは映画の構成について言及。「TVシリーズをそのまま総集編にしたわけではなく、入れ替えたり尺を変えたりして、再構築、リサイクルしている。僕はその構成に監督の意図がすごくあるように思えるんです。ご自身の視点で楽しみながら、監督の意図を意識してご覧いただくと楽しいのではないでしょうか」と話す。
この言葉に昴さんもうなずき、「いろいろな名シーンや迷シーンはあるけれど、映画ならではの演出がたくさんありますよね。TVシリーズにはなかった、世界を身近に感じられるような演出もあります。僕はこの映画を見た時に感激して、監督の頭の中を覗いてみたいと思った。その感覚を劇場で味わってもらえたらうれしい。2回目を見るときは今度は大切な人を連れて、見終わった帰りに水族館に行くのがおすすめです」と語った。

登壇者がそれぞれ『ピングドラム』への思い入れと、支援者への感謝を告げ、「TVシリーズを見た方は何度も見てほしい、まだ作品を知らない人もぜひ劇場に連れてきてほしい」と思いを寄せた舞台挨拶。幾原監督が「今までいろいろな作品の試写会に出たことはあったんですが、今日の試写会は自分の人生の中でも一番緊張しました。なぜかというと、やはり(クラウドファンディング支援者の)皆さんのおかげで今日があるんですね。単純なお披露目という以上に、皆さんの支援の結果を見ていただく場なので、どう受け止められるかは緊張でした。ただ、皆さんに何かを届けられたのであればよかったと思います」と締めくくる。
幾原監督が最後に「後編の公開も控えていて、まだ制作スタッフが頑張っています。後編でキャラクターたちが何を見つけるのか、何を存在証明にするのか、ぜひ見届けていただければ。応援よろしくお願いします」と挨拶し、観客からの大きな拍手とともにイベントは幕を閉じた。

文=青柳美帆子
写真=村山泰紀