劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』

SPECIAL

「RE:cycle of the PENGUINDRUM[前編]君の列車は生存戦略」
大ヒット御礼舞台挨拶オフィシャルレポート

6月4日(土)、新宿バルト9で、劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』[前編]大ヒット御礼舞台挨拶が開催されました。
舞台挨拶には、豊崎 愛生さん(荻野目 桃果役)、上坂 すみれさん(プリンチュペンギン役)、幾原 邦彦監督、そして司会として小泉 豊さん(渡瀬 眞悧役)が登壇。本編公開後に行われた濃厚トークをお届けします。

舞台挨拶は、小泉さん演じる眞悧による注意事項の影ナレからスタート。TVシリーズでもおなじみの「ピングウェーブ」にちなんだお知らせに、ファンの興奮はさっそく高まる。
小泉さんの呼び込みで、豊崎さん、上坂さん、幾原監督が登壇。豊崎さんは桃果のキーアイテムである「運命日記」を、上坂さんは演じたプリンチュペンギンのぬいぐるみを持っての登場だ。壇上には、ずっとバルト9に展示してあった桃果の等身大スタンドも飾られている。

豊崎さんが「今日は運命の至るところからやってきました」と桃果らしい挨拶をすると、上坂さんも「バキュバキュバキュ! バキュバキュバキュ!」と、挨拶の途中から"プリンチュペンギンボイス”に切り替わってのコメント。あいづちも時たま「バキュ」とするファンサービスに、観客席が和みの空気に包まれた。
劇場版から新キャラクターとして参加した上坂さん。出演した反響について聞かれると、「ものすごくありました。公開前から『どんなキャラなの?』と聞かれていたけれど、バキュがバキュでバキュなんですよ……という謎の多いキャラクター。前編を見る限りでもまだ謎なので、さらに後編が気になる存在なのではないかと思います。実際に演じていても楽しくて、後編でどんな動きをするのか注目してほしい」と話した。

豊崎さん演じる桃果はTVシリーズでも重要なキャラクターだが、劇場版ではさらにスポットが当たっている。豊崎さんは「劇場版で新作パートがあると思っていなくて、台本をいただいた時に驚いた。でもすごくすごく私にとって大切な作品だったので、またこうして時を経て関わらせていただけてうれしかったです。TVシリーズのストーリーを凝縮している内容ではあるけれど、編集や音楽や新作カットによって、もう完全に"全編新作”といっても過言ではない」と太鼓判。「みなさんと一緒にこのタイミングで『ピングドラム』の世界を楽しむことができて本当に幸せ。クラウドファンディングなど、みなさんの熱い思いがあって映画になったので、感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。

上坂さんはTVシリーズが放送されていた10年前について「大学に行きながら声優を始めた頃で、大変な時期だったんですが…『ピングドラム』を毎週楽しみにしていました。運命や使命、責任に向き合って戦い続けている、けれど最初から最後まで美しくてキラキラしている世界に惹かれて、勇気をもらいながら、このお仕事に就くことができました。視聴者として見ていた作品に、自分がキャラクターとして参加できることに、夢がかなったと思いました」と振り返った。

幾原監督は「映画をやってみたいと思ったのは、10年間ここまで応援してくれている、『ピングドラム』をずっと心に置いてくれているみなさんにもう1回新たな装いで見てほしいと考えたからです。今回の映画化で、まだ見たことがない方に『ピングドラム』を紹介できる機会が得られたということがうれしい。TVシリーズを見てくれた方ももちろん、見たことがない方にもなんとか楽しんでもらえるような見せ方ができないかと随分考えました」と話す。
それを受けて小泉さんが「10年前に放送した『ピングドラム』に影響を受けて、上坂さんが人気声優になった。誰かの人生に影響を与える、一生心の中に残っちゃう宝物になる、そういう物語や作品を作れる幾原さんが本当にすごいと思いますよね」と語ると、上坂さんは謙遜しながら「みなさんも10歳前の自分を思い出したのではないでしょうか」と続けた。
豊崎さんは"10周年というタイミング”について、「ここ2〜3年で世界にいろいろなことがあって、あり方が問われている。『運命の乗り換え』や『自分の使命』を考えるタイミングで、『ピングドラム』が制作されることが、ひとつの運命に感じます。今だからこその発見がある」と話した。

豊崎さんの前編のお気に入り場面は、桃果が前転しながら登場するシーン。そこでの桃果の掛け声や、桃果が桃に飲み込まれる悲鳴は、幾原監督がアドリブを頼んだ部分。幾原監督は「豊崎さんのいろんな声を聞きたい」という思いのもとに、さまざまなパターンをリクエストしたのだという。悲鳴のパターンのひとつが「アウ!」というもので、豊崎さんが「MJ(マイケルジャクソン)ですか?」と尋ねたというエピソードを明かし、豊崎さんが"MJボイス”の再現をすると、会場は笑いに包まれた。
そんなユニークな収録を豊崎さんは楽しんだとのことで、「桃果はTVシリーズでは、他のキャラクターの回想に出てきて、誰かが見た"フィルター”がかかっていた。今回の映画で初めて、桃果の素の姿を見ることができたように思う。かっこつけてみたり、ごっこ遊びのように振る舞ったり、あの状態を桃果自身楽しんで今の時間を生きているんだなと思いながら演じました」と話した。
幾原監督は豊崎さんの言葉にうなずきつつ、「TVのときは桃果の存在が天使っぽい。今回は人間性を出したくて、天使ポジションはプリンチュペンギンのほうに与えてみた。今回の桃果はすこし『お姉さん』っぽいよさが出るといいなと思いました」と話した。
小泉さんは「幾原監督のディレクションは、こちらの可能性を引き出そうとしてくれる」と話す。上坂さんも、プリンチュペンギンのさまざまな「バキュ」を収録したとアフレコの思い出を語った。

上坂さんは「DEAR FUTURE(TVシリーズのエンディング)」が流れる終盤のシーンが印象深かったと話し、「シューゲイザーというジャンルはなかなかアニソンには存在しなくて珍しい。映像で陽毬の思い出と『DEAR FUTURE』の儚く美しいメロディーが流れたときに、『ああ、守りたい』といろいろな感情がせめぎ合うシーンでした」と魅力を熱弁。
他にも冠葉と真砂子の対峙シーンで流れる「遠き山に日は落ちて」など、音楽にこだわりを感じたと語ると、幾原監督も「見終わったあとに、『音楽を聞いたな』と残るのがいいなと思っていました」と続けた。

7月22日に控える後編公開に向けて、後編への期待ポイントを聞かれると、豊崎さんは「TVシリーズをご覧になっている方は、結末をご存知の方が多い。けれど、私は後編の終わり方は、『今感じること』をすごく新鮮に捉えました。TVシリーズを知っている人でも、劇場版の後編を見終わったときは、違う感覚になるんじゃないかなと思います。私は桃果というより個人として映画の中に引きずり込まれて、『これは私の物語だ』と感じたんです。前編で桃果が高倉兄弟に語る『これはあなたの物語』というセリフが後半で響いてきますので、ご覧になるときはみなさんそれぞれの人生を重ねて、ご自身の物語として見ていただきたいです」と微笑む。
上坂さんも「アフレコ自体は終わっているけど、ここからどう音楽がついて、どう色がつくのかワクワクで、本当に楽しみ。TVシリーズのときに見ていた気持ちとは絶対にちょっと変わって、豊崎さんのおっしゃる通り、『彼らの物語』でもあるけれど、そこには自分もいる。本作は実写パートが印象的で、キャラクターのいる世界が、私たちがいる世界なんだなと思います。後編も見ていただくと、これからも続くみんなの人生を彩っていくんじゃないかなと思います」と熱く語った。
2人のコメントを受けて、幾原監督も「兄弟たちやキャラクターたちが、僕たちの世界に生きているということを伝えたかった。いま舞台挨拶を行っているバルト9周辺の風景も、実は前編に入っています。前編で桃果が高倉兄弟に『成すべきことを見つけろ』と言うけれど、後編で2人が見つけるものがなんなのかを見届けてほしい」としめくくった。

トリプルHによる劇中歌を収録したCDアルバムは7月20日に発売予定、一部楽曲が先行配信中。『RE:cycle of the PENGUINDRUM』後編は7月22日に公開予定と、ファンにとって楽しみな予定が続く。幾原監督が「後編も引き続き盛り上げよろしくお願いします」と締め、舞台挨拶は盛況に終わった。

文=青柳美帆子
写真=村山泰紀